- BLACK THRUSH -


||| ATTIC |||


僕は、結局のところ。
恋なんてした事がないのだろう。
いくら相手が替わっても、
あれは、恋と呼べるものではなかったから。

ただ、あの人に対して時折襲われるこの感情は、
何なんだろう。

心を素直に言葉にする事は、
躰を合わせるよりもずっと難しくて。
どうしてもつぎはぎの行動をとってしまう。

初めから、
誰でもいいわけじゃなく。

本当は、
想いを伝えたいだけなのに。



堕とそうなんて考えてるわけじゃない。
巧く伝えられないもどかしさが溢れているだけ。

こんなときは、
どうすればいいんだろう。
どうしたらいいんだろう。



誰にも、特別扱いは、して欲しくないのです。


僕には、それを受け止めるだけの
覚悟も気力もないから。

そう、僕は、想われてるだけで重いから。
見返りを求めない想いなら、尚更に。

誰かにそばに居て欲しいと願う反面、
誰も中まで入ってきて欲しくはないのです。

欲しくて欲しくてたまらないのに、
壊してしまうのが恐いから、
自分のものにするのは嫌なのです。


だから、今もヒトリでいるのでしょう。
情けないけれど、これが今の自分なのです。



僕が君を心配するタイミングが
君の欲しがるタイミングなのは



君が昔、
溜息を吐く代わりだよって言ってたから。



溜息を吐く代わりに増えていく煙草に
君は自分で気付いていないのやら。



目の縁を紅く上気させて
口唇を噛む君の顔を
見る度に湧き上がる甘い痛み。


切れ切れな呼吸の合間に
時折放つ艶やかな声も

この腕の中に
収まってしまうほど細い躰も

漆黒の睫毛に縁取られた
潤んだ瞳も

夜を彩る甘い痛みへと吸い込まれていく。


君を組みしだくこの体の中を駆け巡るのは
狂おしい程の


悦びと、背徳感。

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好きだと言った瞬間に
壊れるであろうこの関係は
僕に選択を迫る。

手に入れられるのは
心か。
躰か。



僕は君にキスをねだる。
子供がお菓子をせがむように、
何度も、
何度も。

愛が欲しいわけじゃなく、
ただ、拒まない理由を訊きたくて。

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本当は、
欲しいのはキスじゃなくて

「好き」っていう一言なのかもしれない。



するりと腕の中に入って来たくせに
するりと腕の中に入ってきたからか

君を捕まえておくことができなかった。

かごの中に入れてしまったら
首輪をつけて繋いでしまったら
死んでしまうと思ったから

束縛はしないでいたのに。



黒銀の甘い香りだけ残して
消えてしまった君は
もう 此処には戻ってこないつもりだろうか。

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僕の元から逃げてしまう前に
いっそ閉じ込めてしまえば良かったのか。



昼間なのにカーテンを閉め切った
薄暗い部屋で


君は僕を誘惑する。


まだあどけない肢体を晒け出し
僕の本能をかきたてる。
理性と本能の間に翻弄される僕を
嘲笑っているのか

白い手足と 長い黒髪に
誘惑の媚薬をたっぷり振り掛けて。

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からかわれているのだろうか。
試されているのだろうか。
この誘惑天使の前に
僕は抗う術を持ちはしない。



昨夜 この腕に抱いた君の身体が
思っていた以上に細くて


ドキリとした。


慣れない行為に応えようとする君の姿が
いじらしくて
愛おしくて

余計に好きになった。

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濡れた睫毛と
開いた唇、
細い手首で僕を捕える。



君を
泣かせたかったわけじゃない。
苦しませたかったわけでもない。

ただ
いつも笑わせていたかっただけなんだ。
なのに
君の心は遠ざかってしまった。

何がいけなかったんだろうか。
僕がいけなかったんだろうか。

この頬を伝うのは
悔しさか
憎しみか
それとも
ただの自己憐憫か。

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想うだけで苦しむ恋なら
いっそのこと
この身ごと滅びてしまえば良いものを…。



水面上の月のように
ゆらり ゆらりと
本心を隠す

君の心が、
今は欲しい。

手を伸ばせば壊れてしまうのを
知っているのに

手を伸ばさずには いられない。

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本心を見たいと思うのは
やはりただの僕のエゴなのだろうか。


片隅

さらり、と髪をかきあげる
君の指に。

口唇をなぞる、
君の指に。

グラスを掴む、
君の指に。

本をめくる、
君の指に。

ソノ気は無いのに 見惚れてしまって。

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この指が僕に触れたらどんな感じなんだろう
とか、つい、考えてしまいます。



指先を噛んで
口唇を噛んで

泣きそうになるくらいなら
僕が受け止めてあげるのに。

居場所ならあるから
もう少し 此処にいなよ。
抱きしめて
髪を撫でて
暖めてあげるから。

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人知れず涙するくらいなら、
僕の腕で抱きしめてあげるのに。
なんて。


所詮は届かない呟きですが。



みんなでいると
すごく楽しそうに笑う君が

一人でいると
表情が無くなる事に気付いた。

笑っている君が偽物なのか
笑ってない君がそうなのか


探りを入れても
ただ
君は微笑って隠すから


どうしても、疑いたくなる。

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気付かないうちなら
知らない振りもできたのに。

気付いてしまったからには
知らない振りは
できないし、したくない。

君を近くで守りつづけることこそが
今の僕の存在意義なのだと思いたい。



「愛なんかいらないよ」なんて
口では言うくせに
同時にそれを全身で欲するのは
強がりなのか
自覚していないだけなのか。

君が僕に求めるものが
愛でないのだとしたら
僕は君に何をあげたらいいんだろう。

与えるものは持っているけれど
君からは奪うことしかできないんだ。

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「愛が欲しい」
「愛が欲しい」
「君の、愛が欲しい」



君に
触れたいと思う事こそ 僕の罪。
それが叶わない事こそが 僕への罰。


小さな白いこの部屋で
毎夜、毎夜、
罪を、
紡ぐ。
一束、
また
一束。
罪を紡ぐごとに
細く紡がれた罰が
僕の心を搦め取る


逃れるためには
罪を紡がなければ
いいだけのこと。


解かってはいるものの
君に触れたいと
想うことこそ
僕の罪か。


緩やかに
穏やかに
けれど決して抗えない
君への想い。

それを諦めるくらいなら選ぶ道はただ一つ
生涯この罪を背負ってゆくこと。

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定石通りの恋なんて意味を成しはしない。
相手がいるから諦めなきゃいけないなんていう道理もないだろうに。
遊びでも気紛れでも気の迷いでも構わない。
ただ、僕が居ることに気付いて欲しいだけ。



花弁を、
喰らふ。

一枚、一枚

桜の、
花弁を、
喰らふ。

真つ黒な宇に薄紅く発光する桜は
妖しくも儚い命を

撒き散らしては溶け落ちてゆく。

命が燃ゑ尽きる其の一瞬を
僕らは捕らへて喰らふのだ。

口角に振り落ちた雫を
するりと
指先で掬ひ取り

濡れそぼつた口唇に
甘やかな接吻を捧げ

髪に手を差し入れ

桜の香りが残る口内を
ゆつくりと舌で味わふ。

散りゆく間際の愛しさを喰らふ
最高の、贅沢。


僕らは雨に浸かるのも構はずに
長ひ間その場で抱き合つてゐた。

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夜の桜は、昼間のそれよりも
妖しさと儚さが増して
酷く蠱惑的な情景を醸し出していて
知らぬ間に違う世界へ引き摺りこまれてしまいそうな感覚に陥ります。



それが
誰かを内に迎え入れる事で生じる汚れなのならば
甘んじてそれごと受け入れたいと思っているよ?

なぜなら、

誰にも入ってきて欲しくないのなら
扉の鍵を開けておいたりはしないのだから。

ただ。

鍵を開けては いるものの、
こうして扉を閉めているのでは
開けてみようとする人は少なく。


汚れたって構わないんだから
君には入ってきて欲しいんだ。


僕を、知って欲しい。
理解して欲しい。
そして、抱きしめて欲しい。

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入ってきて欲しい人に限って
扉の前を素通りしてしまうのが世の常というもの。



君と、
一緒にいられないのが
寂しいわけじゃない。

一人の時に、

僕が君を想っていても
君は僕を想っていないから

それが

寂しくて
哀しくて
やるせないだけで。


だからきっと、
いつまで経っても僕の片想い。
二人でいても僕の片想い。
完全に、僕の片想い。

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一方通行か、
はたまた並行世界か考え込むところではありますが。



真ん中でぱちんと割った貝殻の
対の一つが消えてしまえば
元通りは無理
模造品はない
そんなのは必要ない。


君の愛し方を僕は理解できなくて
僕の愛し方を君は理解できなくて


それでいい。

君が僕を必要としてくれるのはいつも
君が泣いている時だけで
君が僕を必要としてくれるにはいつも
僕は君を必要としてはいけなくて

抱き締める腕を持てない僕は
唯一傍に居られるように
君のことを好きじゃないフリする。


それでいい。
それが僕の愛し方だから。


そう、言い切ってみせられるなら
僕を必要としてくれるんだろう?



一つ恋をするたびに
一つ言葉を紡ごう。

誰に届かなくても
君に届かなくても

一つ、また一つ。

これは、
僕が生きた証し。
そして、
君がいた証し。

毎日毎日君に恋をして
毎日毎日君への言葉を紡ぐ。


僕がいたことを刻む為に。
僕が生きたことを刻む為に。

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刻んだ跡は、見えない場所へ。
僕の想いは君へは届けない。