- BLACK THRUSH -


||| ATTIC |||


薄汚れた 硝子の摩天楼。
かつては煌びやかに輝いていたであろうそれも
今となっては
埃にまみれ
傷つき 罅割れている。

だが
高く あまりにも高くに
在るが為に その姿は
あたかもかつてのままの様。

地に堕ち目を病む堕天使たちは
それでも
在ると固く信じて
いつかは還る夢見続けて
叶わぬままに地に朽ち果てる

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信じるものは、何処へ行くのだろう。
行き先のわからない列車に乗って、ただ、
このまま堕ちてゆくしかないのか。



答えの出ない問いを携えて
削れた月を追いかける。

蒼く蒼く 今にも融け落ちそうな月は
影の上に融解液を滴り落とす


僕がこの手に握りしめたものは何だったろうか。
善きものだったか悪しきものだったか
それすらも思い出せない。

辿りつくまで
手の中は見ちゃいけない。

掌に握りしめた何かは
刻一刻と重みを増して

月がどんどん削れてゆくのを
目の当たりにしてもまだ僕は追いつけない

追いかけても追いかけても
どんどん遠くなる月を
ただ追いかけるだけ

追いついたら何が起こるのかさえも知らないのに
僕はただあてもなく追いかけ続けるだけ。

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現にいても追いかけつづけ
夢の中でも追いかけつづけ
いつになったら追いつくことができるのだろう。



外側を削って
内側を浚って

赤黒い
風が吹く。


生温い湿っぽさと
引き裂かれた鳴き声みたいな音を携えて

赤黒い
風が吹く。


崩れ堕ちれば
そのまま腐れ落ちそうな予感。


憑かれた肩を抱えながら
疲れた足を引き摺って

僕はいつまで迷い続けるのか。

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行きつ戻りつ迷いつつ。
行き着く先に正解はない。

ただ、
倒れ落ちた場所を最果ての地とさだめるだけのこと。



此処から眺める水面は
絶え間なく揺らぎ
僕の上に細い光の筋を落とす。

重い鎖に引きずられ
手を伸ばしても届かない
手を伸ばせば届きそうに
あんなにも近くに見えるのに。

きらきら波打つ水面を見上げて
僕はまたそっと眼を閉じる。

来るはずのない君を待ち焦がれながら。



空が白み始める頃
窓を開けて深呼吸する。


白い白い空気を肺に詰め込むために。


新聞配達のバイク音を背景に
お気に入りのライターで
煙草に火をつけ

暁の空に揺らめく紫煙を仰ぎ見る。

煤けた心を浄化しようとしているのか
浄化されない事をわかってやっているのか


朝の空気に冷されて
昔の古傷が疼き出す。
傷自体ではなく、心が痛い。
痛む心を誤魔化すように、大きく息を吐き出したり


今にも崩れて落ちそうな灰を
腕を伸ばして下に落とす。
悩む心を振り落とすふりをして

空がその光を抱き始める頃
開けた窓を閉めて僕は浅い眠りに落ちる。



しばらく逢わないうちに
ずいぶんと大人びた君。


僕の記憶の中の君と
僕の目の前に居る君が

どうしても重ならない。


君と僕が過ごした時間があった事が
まるで無かったかのような君の素振りが

今はただ、寂しい。



話す顔も
笑う声も

何て、愛しいんだろう。
何て、愛しかったんだろう。

揺れ動く気持ちは
恋じゃなく
愛じゃなく

ただの、寂しさ。



だからといって、
今さら抱きしめてもらいたいとは思わないけれど。



知らない街で
君を見かけた。

僕に気付かず通りすぎる君は
僕の知らない顔をしていた。

知らない街で
知らない人と
親しげに話す君から
逃げるように地下道へ降りた金曜日。



結構近くにいるのに
意外と遠い

わかってるけど一線引かれてること



この距離は永遠?

リスキーな賭けをしようか。

それともずっとこのまま?



負けそうな感じ
君は友情に賭けてる
僕は恋に賭けたい気分
君の勝ち目は八割かもね

長く続く領域外なら
いっそのこと捨てるの覚悟で
残りのニ割に賭けてみようか


もっとそばにいかせてよ
君の中まで入らせて

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友情以上恋人未満・な関係の罠。

長く続く少し遠い関係と
短いけれどかなり近い関係、

どっちのほうがいいのやら。



君が好きだと言ったから
僕は煙草を吸うようになった

君が好きだと言ったから
僕は香水をつけるようになった

君が好きだと言ったから
僕は柄物のシャツを着るようになった

君といるときにだけ
申し訳程度に吸う煙草の
二箱目がなくなる前に

君といられなくなった



君が来ない僕の部屋に残されたのは
まだ新しい灰皿と
本当は好きじゃない 柄物のシャツ

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ノイズ:<noise>騒音。雑音。

君にとって、僕はなんだったんだろう?
少なくとも僕にとって、君は大切な人になりそうだったのに。



好き 嫌い 好き
嫌い 好き 嫌い
好き 嫌い 好き 嫌い
好き 好き 好き 好き


大好きだけど、愛してない。



サボテンに、冷えた珈琲をかけた。

黒い、有害成分で満たされているかの様な液体を、
干乾びたサボテンはそれでも、飲もうとした。

ただ、生きる為に。
ただ、生きる為に。
ただ、生きる為に。
ただ、生きる為に。


サボテンに、冷えた珈琲をかけた。

貪る様に珈琲を吸収するサボテンは、

とても
愛おしく見えた。



君の吐く嘘はとても甘いから
信じたい気持ちと相俟って

つい
信じてしまいそうになる。


甘い甘い嘘が
君の口唇から紡ぎ出される限り


僕も君を愛し喰べ尽くすよ。



白い灰色が
玄い虚空を舞って
舞って
はらはらと舞い堕ちる

ダークグレイの景色も
気にならないくらいの寒さ

雪虫の翅に似た灰は
玄い虚空を舞って
舞って
はらはらと舞い堕ちる
脳内に降り積もる
真夏の雪。



「わかりやすくみゑるからとゐつて
 そのすがたをしんじたらいけないよ。
 だからとゐつて
 むりにしんじつをみやうとしてもいけない。
 わかりやすくみせてゐるのは
 そこから内には はいつてきてはいけないといふ
 さいん なのだから。」

「だとしたら。
 わかりにくくみせるのは
 わかつてほしいといふ さいん なのでせうか。」

「否、否、否。
 それもきつとちがうのだよ。
 わかりにくくみせるのは
 わかろうとはしないでくれといふ
 さいん にちがいないよ。」



もし、そうだとしたら。
僕は一体、君に何を信じさせたら良いというのだろう。
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追記:愛に似たもの について。
愛、は、いつかは途切れるもの。
愛に似たもの、なら、もともと存在はしていないのだから、無くなっても痛くはないだろう?
俺があの人に求めるものは、愛に似たものだけ。
俺があの人にあげられるものも、愛に似たものだけ。
全てのものは、所詮偽り。



パチパチと
静電気みたいな星屑を撒き散らしながら
ツキノサカナがこっちに来るよ

早ク捕マエテヨ
逃ゲチャワナイウチニ

ああ でも ほら
捕まえたら
光らなくなっちゃったよ
動かなくなっちゃったよ
どうしようか。

ジャア
ソンナモノ
モウ イラナイワ。



月華に俯くビスクドォルは
今にもくづれ堕ちてしまいさうで
どうにも見てゐられないよ。

――― ならば見なければ良いぢゃないか。

さういふわけにもいかないのだよ。
見てゐるよりも
見られない事のほうがつらいからね。

――― ぢゃあきみはどうするつもりなんだい?

それは …。



刹那月のビスクドォル
ほんのいっときだけの涙
嘘笑いを続けさせるくらいなら

今、コノ瞬間ニ壊シテアゲル



優しい人は いつも自分を傷つける。

できる限り
人を傷つけまいとして。

自分の所為で
人を傷つけたと知ると
それ以上に自分を傷つけて。

自分の所為じゃなくても
傷ついた人を見ると
それ以上に傷ついて。


とりたてて強いわけじゃなく、
かといって弱いわけじゃない。
ただ、優しいと云うだけで
なんて傷はつき易くなるのだろう。

その優しさの
ほんの一欠けらでも
自分に向けてあげれば良いのに。



一歩半先を歩く君の背中に
向日葵の影がかかる。

一歩半遅れて 僕の上にも
向日葵の影がかかる。

ふと後ろから手を伸ばして
君の手を握り締めたい衝動。



夏まであと一歩半。



歪んだ想いなんてただのエゴだわ


そう言った君は、
だって


歪んでない想いなら
気付いてもくれないくせに。


多少歪んでたほうが
そこに存在してることが判る分
まだ信じられるはずだろう?



編物なんかできないと
言った君が買ってきた空色の毛糸 君の好きな色

僕に何か作ってくれるのかと期待したのに
その日僕の部屋に置いて帰った

夜中にメールでわけを訊いたら
「それあげるから何か作って」
凹んだけど笑った オッケー
マフラーくらいなら八日で編めるよ
残った毛糸は僕の手袋

煙草の匂いのマフラーを
誕生日にでもプレゼントしよう
Happy Happy Sunny Day