- BLACK THRUSH -


||| ATTIC |||


時雨ざわめく五月の夜に
佇みながら穢れを落とす

ぬるまった月を眺め
体内の時間を遡る。

五感を研ぎ澄まし
戻り、遡る

螺旋の月。


足元が不意に虚に変わる瞬間。

ざわりと足元を掬い、

脳髄まで一気に呑み込まれる。

ざわりとした感触は

背筋を伝い体表を巡りやがて

ざわりと声を上げる。

躰中の血液が消失する焦燥感。


それは例えば
パズルの欠片がはまるような
デジタル的な感覚ではなくて
水が満ちて零れ落ちるような
アナログ的な感覚なのだろう。

そうか。
恋と愛の違いって
そんなものなのかもしれない。


とりあえず
棘で抉り
傷つけ
君を
試そうとする。

いつまで僕を
繋いでくれるか


もう止めようと思っているのに
それでも

何度も何度も
何度も何度も

君を傷つけ試そうとして

そんな自分に自己嫌悪して。


背骨を跳ね上がる衝動
一瞬で血潮が沸騰して
呼吸が酷く困難になる

恋という感情は
こんなにも暴力的なものだったろうか。



わからないままに君を求め
求めても与えられないことに苛立ち

そして

独りで眠る夜に幻を視る。


君のことは

もう 愛していないから
もう 愛してるなんて言わない。





この想いは
恋だとか
愛だとか
そんな儚いものじゃなく
ただ
とても愛おしく、
とても大切に想う気持ち。


だから


これから先に
恋人ができても
きっと、君が一番。


恋じゃなく
愛じゃなく
肌に沿わせ滑る手を

嫌うなら
振り払えばいい。

そうできないことを知っていて
君の寂しさを知っていて


甘やかな口づけも
密やかな囁きも

与え続けて


君を引き止めておきたいと想うのは


シラナイ
イラナイ

君を想う気持ちを邪魔するものなんか


君の恋人も
君の家族も
君の友達も

全て消してしまえば
君は僕を見てくれるだろうか。

僕だけを見てくれるだろうか。

けれど僕は
楽しそうに恋人の事を話す君が好きで
家族を大事にする君も好きで
友達を愛する君も好きで

それを消す術も知らない。


そして君は僕を見てくれはしない。


だから僕は
今夜も君を想いながら
誰かの肌にすがるのだろう。



それなら寧ろ

シラナイ
イラナイ

君を想う気持ちなんか
封じるより早く捨ててしまいたい。


もう、僕の事なんか
忘れてしまえばいいのに、と思う。

けど僕は、
君が そうできない事を知っていて
君に甘えているんだろう。

拒まないなら
怠惰な関係がきっと続いてゆくことは


君も僕も
気付いているはずなのに。


繋いだ指の中で異質な触感を放つリング

君の指に光るリング
僕にとっては異物


なんで僕じゃ駄目なんだろう。


わからない



わからない。


どうしたら 信じてくれる?
何をしたら 信じてくれる?


他の人を見ないように
僕の双眸を潰してしまおうか?

他の人に言の葉を紡がないように
僕の舌を切ってしまおうか?

それとも
それとも

他の人を抱かないように
他の所へ行かないように
僕の四肢を切ってしまおうか?

他の人が触れたいと思わないように
僕の肌を焼いてしまおうか?


なんて
言ってみるだけで
絶対にやってやらないけどね。


だってそんな事をしたら

君を
見つめることも
言霊を紡ぐことも
味わうことも
キスも
触れることも
抱くことも

君と一緒に歩くことも

何もかも

できなくなってしまうから。



それに
そんなことしなくても
よそになんか行かないよ。

君に恋をした僕は
もう、籠の中の鳥も同然なんだから。


此処には
もう

戻ってこないよ。


君との思い出が
多すぎるから。


二人で歩いたこの道も今
君が居なくても
鮮明な画像で僕を襲う。

君が居なくても
極彩色で脳内を翔る。


水面に歪む僕の影が
ぼやけて溶けて
底へ沈んで。


先に手を離したのは僕
だから


泣く資格なんか
とうに
とうの昔に

無いというのに


もう二度と
逢いたいのだと
愛してるのだと


言うことが


手が届かなくても
居てくれるだけでいいのです。

君が居てくれるだけで
充分なんです。


君のことが好きでした。

いまでも君が好きです。
いまでも君が好きです。

いまでも君が好きなのに敢えて過去形で言うのは

いまでも君が好きだからです。

見ないでいて。
気づかないままで。
僕はまだ抜け出せていません。


君と別れた帰りに独りで聴いた歌を
こうしていまも聴いています。

独りで、聴いています。

寂しくて
恋しくて
泣きそうになりながら
独りで歌を、聴いて、います。

けれどもこうして思い出すのは
君の笑顔なのですから


それもまた
愛しいと思えるのです。


無茶をするとすぐに病む
脆弱なこの躯でも
君が愛してくれていた時があるから

大切だと思う、不思議。


戒めが未だに

私は彼のもの、と言っているのが
彼は私のもの、と言っている様で


ひどく、
哀しくなるのです。


男は女の最初の男になりたがり
女は男の最後の女になりたがる


だったら僕と

最初で最後の恋をしませんか?