- BLACK THRUSH -


||| WORDS LOG |||

足跡

京都の雨は
自らの音を消して降ると言ったのは
貴方だった。

音もなく降る雨に気付くと
頭に浮かぶ言葉。

私が放った言葉も
貴方の中に残っているのでしょうか。


言い訳

連絡先を知らないのと
知っていても連絡できないのとでは。



どちらが辛いのだろう。



声が聴きたくて。
顔が見たくて。
肌に触れたくて。


もし知っていても それが叶わないのなら。



いっそのこと知らない方が
辛くはないのだろう。


偶然

雑踏の中で見つけた、
貴方によく似た人。

そんなはずはない。




居るはずがないのに。
判ってても心拍数が跳ね上がる。


自分の目を疑って。
なのに 逢えたと思いたがって。


目で追って
振り向いて
人込みに消える背中を見つめて。


過ぎてから

後悔をするために好きになったわけじゃない。

後のことなんか考えないで

ただ
ただ
ひたすらに。

自分の気持ちに正直になればよかった。

例え今、後悔しているとしても、
それは 恋をしたこと にじゃなく
恋だと気付けなかったこと。


TOO LATE?

赤い実が、ぱっと弾けるように ... 。
そんなふうに言った小説があったけれど

気付くのが遅かったみたい。
気付くのが遅すぎたみたい。

一緒にいたいと思った。
これがそうなのかと思った。

もう遅かったみたい。
遅すぎたみたい。

想いを告げる事すら私には許されないの?


深い眠りに

毎日逢っているのに
夢でも逢いたい。

起きているうちは
貴方は別の人のものだから。

だからせめて
せめて短い夢の中でだけでも
私のものになってください。

夢の中でもし逢えるなら
このまま目覚めなくても構わないのに。


昼間の月

私には
昼間の月は
もう見えない。

青白く発熱しながら燃え落ちていく
昼間の月。



いつかその凍てつく炎に焼かれてしまうのでしょうか。



それともあれは
私の欲望が見せた
ただの幻だったのですか。


黒い海

真っ黒な海の前に、
独り、佇む。

真っ黒な空と
真っ黒な海は
境界線を持たないから
私もその色に飲み込まれる。

風が凪いでいるから
海も凪いでいて
波の音が聞こえない。

耳の奥が痛くなるくらいに
音の無い世界。

真っ黒な世界に、
独り、佇む。

忘れようとする事は
思い出すことに他ならなく。

忘れよう忘れようと言い聞かせるたびに
思い出が鮮明に蘇える。
甘い記憶が身体を切り裂く。

この広い海の端っこで

真っ黒な空と
真っ黒な海と
昔の記憶に
押しつぶされそうな私がいる。


右隣

何かある毎に。
つい、貴方に話掛けてしまって。

もう、私の隣にはいないのに

何かある毎に。
つい、貴方の名前を呼んでしまって。

もう、私の隣にはいないのに

困った事があっても、
嬉しい事があっても、
悲しい事があっても、
楽しい事があっても。



知らないうちに、
貴方に頼っていたんだね。

でも もう貴方は隣にいない。


十六夜

私の腕は
いつからこんなに不器用になっちゃったんだろう。

貴方を抱き締めることも
貴方の髪を撫でることも

貴方に手を伸ばすことすら躊躇うなんて。



きっと貴方には別の子がいると知ってしまったからね?


月の剣

泣きながら眠る夜に
夜明けはこない。

ただ、鬱々とした暗闇に飲み込まれていくだけで。

貴方を見るのが
近くになればなるほど
夜明けの来ない夜が長くなる。

もう 夢も見たくない

夜明けの来ない夜しかないなら
せめて私に誰か光を。


無限城

幾年も

音を紡ぎ
言葉を紡ぎ
唄をも奏でたとしても。


それは、届くあてもなく ただ消えていく。


貴方以外の誰に贈るものでも無いものだから。


更待月

私はもう、
闇い時間を怖れたりしない。
貴方の光が照らさない今、
何処にも怖れる理由は無いから。

月の雫で夜が沈んでも
私の時間は留まったまま。
僅かばかりも照らされないまま。


侵蝕

もう 何もいらない。
誰もいらない。

貴方ですらも。

追いかけて
求めて
そのたびに傷つくだけなら
何も無いほうがましだって事に
やっと気付いたの。


お願いだから
これ以上掻き回さないで。
私を侵蝕しないで。

代わりのものなんかじゃ満たされないから
そんなに儚い夢は欲しくないから





どうかもう これ以上は…


鎮魂歌

骸を集め
涙を注ぐ

それは
一体誰のものだろう。

貴方の破片か
私の破片か


壊れてしまったけれど
何の感傷も無く捨てられるわけじゃない。

骸を集めて
涙を注いで

浄化されることを願いつつ。



あんなこと 言わなきゃよかった。
壊したくなかったから言わずにいたのに

こぼれた言葉は
いまさら無かった事にできるはずもなく
移る時間を気まずいものに変えてしまった。

そばに居たかっただけ。
もっとそばに居たかっただけ。
他の誰よりも。

これは欲張った罰なんだろうか。


夜の桜

夜桜を見る度に胸が痛むのは、
傍に貴方がいないから。

桜の華が 泣いているから、
傍を通る度に心が騒ぐ。

さらさら さらさら。
さらさら さらさら。

さらさら さらさら。
さらさら。

私の中から、また何かが逃げていって。
何かが壊れていって。
それを繋ぎとめることも、直すこともできずに、
ただ、眺めている。

嫌いなのは、夜桜じゃなくて弱い自分。
泣きたくなるのも夜桜の所為だけじゃなく。


時間

あんなに鮮やかに覚えていたことが
今では うすぼんやりとしか
思い出せないのです。

こうして貴方を忘れて行くのでしょう

それで いい。
それが いいのです。

時計の針は
巻き戻してはいけないのです。


だからお願い
もう思い出させないで。


再会

暫くぶりに逢った貴方が
なんだか変わって見えるのはなんでだろう。


前の私じゃ気付かなかったこと。
前の私じゃ気付けなかったこと。

今だからわかること。
今じゃなきゃわからないこと。




もっとたくさんの時間を
貴方と過ごしていたら良かった。


待宵

ほんのひとときの賑やかさが去って
今、ひとり座っている。


月がだんだん薄まっていって
暁の空に吸い込まれて行くのを見ながら。



貴方がそばに居てくれないから
このまま眠る気になれなくて。